
バックオフィス総務BPOで使える「人時・人日・人月」をやさしく、実務的に解説
1. なぜ総務の「忙しさ」は理解されにくいのか?
総務・バックオフィスの「いつも忙しい」がなかなか理解されないのは、
その忙しさが感覚的な言葉で語られがちで、数字として説明されていないからです。
多くの会社で、こんなギャップが生まれています。
- 現場の総務
- 「毎日バタバタで、時間がいくらあっても足りない」
- 「新しいプロジェクトが増えるたびに、雑務も一緒に増えていく」
- マネジメント側
- 「総務が忙しそうなのは分かるが、具体的にどのくらいの業務量なのか分からない」
- 「人を増やすべきか・BPOを使うべきか判断しづらい」
つまり、「忙しい」「大変」といった言葉は共有されていても、
「何人が何時間使っているのか」という共通のものさしがないために、
議論が感覚レベルにとどまってしまうのです。
総務担当者に「何がどれくらい大変ですか?」と聞くと、
- 「問い合わせが多くて…」
- 「備品の管理や郵便対応がじわじわ効いていて…」
- 「入社・退社の手続きのたびに残業になってしまって…」
といった答えが返ってきます。
一方、経営会議では、
- 「総務は本当にフルタイム2人も必要なのか?」
- 「他社はもっと少ない人数で回していると聞いたが?」
といった視点で語られます。
このギャップを埋めるカギになるのが、工数の単位である「人時・人日・人月」です。
総務の価値や忙しさを正しく理解してもらうためには、
感覚ではなく数字で語るための共通言語が必要です。
その共通言語となるのが、「人時・人日・人月」という工数の考え方です。
2. 工数とは何か?「忙しい」を数字に変えるものさし
工数(こうすう)とは、
「どれくらいの仕事量があるか」を、時間と人数の掛け合わせで表したものです。
仕事量を「時間」だけで見ると、次のような違いが曖昧になります。
- 1人が40時間かけて対応したのか
- 5人が8時間ずつで終わらせたのか
単に「40時間かかった」と言うだけでは、
必要な人員計画やBPOの適切な範囲が判断しづらくなります。
そこで、次の3つの単位で仕事量を表します。
人時:1人が1時間働く仕事量
人日:1人が1日(目安:8時間)働く仕事量
人月:1人が1か月(目安:20営業日=160時間)働く仕事量
同じ「40人時」という工数でも、内訳はいくつもありえます。
- ケースA:1人 × 40時間 = 40人時
- ケースB:5人 × 8時間 = 40人時
- ケースC:2人 × 1日8時間 × 2.5日 = 40人時
工数で考えると、
「この仕事は合計40人時が必要」だと整理したうえで、
- 1人でじっくりやるのか
- チームで分担して短期間で終わらせるのか
といった“戦略”を考えやすくなります。
工数は、「何時間 × 何人か」を共通の物差しでとらえる考え方です。
この考え方を土台にして、「人時」「人日」「人月」を使い分けていきます。
3. 「人時(にんじ)」:総務の細かい仕事を可視化する最小単位
人時(にんじ)は、1人が1時間働く仕事量を表す単位で、
総務の「細かい仕事」を見える化するための最小の単位です。
総務の仕事は、多くの場合、
「1件あたり数分〜数十分」のタスクの集合体です。
- メール1件に返信する
- 社員証を1枚発行する
- 郵便物を仕分ける
- 会議室予約を調整する
こうしたタスクの「1件あたり時間」を押さえておくと、
1日分、1か月分の仕事量を後から冷静に足し上げることができます。
式はシンプルです。
人時 = 作業時間(時間) × 人数
例1:社員証の発行
- 社員証1枚の発行 → 顔写真確認/氏名・部署入力/印刷/台帳登録など
- 1枚あたり 15分 かかるとします(=0.25時間)
この場合、
- 社員証1枚 → 0.25人時
- 社員証4枚 → 0.25 × 4 = 1人時
となります。
例2:郵便物の仕分け
- 毎朝の郵便仕分けに 30分 かかるとします(=0.5時間)
1人で30分作業する場合:
0.5時間 × 1人 = 0.5人時
2人で15分ずつ作業する場合:
0.25時間 × 2人 = 0.5人時
どちらも「0.5人時」で、仕事量としては同じです。
例3:1日の総務業務を人時で合計する
ある日の業務をざっくり人時で整理すると、例えば次のようになります。
- 郵便仕分け:0.5人時
- 備品の発注処理:1人時
- 問い合わせメール対応:2人時
- 社員証の発行:1人時
- 会議室調整:0.5人時
合計:
0.5 + 1 + 2 + 1 + 0.5 = 5人時
つまり、
「この会社の総務業務は、1日あたり5人時の仕事量がある」
と表現できます。
人時は、総務業務を「ボトル1本=1時間」のように分けて並べるイメージです。
1件に何分かかるのかを意識して人時に落とし込むことで、
「なんとなく負荷が高い仕事」が「具体的に何時間かかっている仕事」に変わります。
4. 「人日(にんにち)」:1日の忙しさをフルタイム換算で捉える単位
人日(にんにち)は、1人が1日(目安として8時間)働く仕事量を表す単位で、
「フルタイム何人分の仕事か?」を直感的に理解するのに役立ちます。
マネジメントや他部署に説明するとき、
「5人時あります」よりも、
- 「フルタイム換算で〇人分の仕事です」
- 「1日あたり〇人日です」
と伝えた方がイメージしやすく、
人員・採用・外注の話に繋げやすくなります。
人日の基本的な前提は次のとおりです。
- 1日 = 8時間働く
- 1人日 = 8時間分の仕事量 = 8人時
例1:5人時の仕事量は、何人日か?
先ほどの例で、総務の1日分の仕事量は5人時でした。
- 1人日 = 8人時
とおくと、
5人時 ÷ 8人時/人日 = 0.625人日
となります。
これは、
「フルタイム1人の1日分を1人日としたとき、
6〜7割程度の仕事量」
という意味です。
例2:2週間分の工数を人日・人時で見る
- スタッフ2人
- 10営業日(約2週間)
で対応するとすると、
2人 × 10日 = 20人日
さらに人時に直すと、
20人日 × 8時間 = 160人時
です。
つまり、
「2週間で、合計160時間分の総務業務を行った」
と説明できます。
人日は、現場の「人時」という細かな数字を、
マネジメントが理解しやすい“フルタイム人数”に翻訳する単位です。
「1日あたり〇人日」という表現ができると、
「この業務はフルタイム何人で回すのが適切か?」という議論が一気に具体的になります。
5. 「人月(にんげつ)」:契約・予算・体制設計の基準となる単位
人月(にんげつ)は、1人が1か月働く仕事量(目安:20営業日=160時間)を表す単位で、
バックオフィス総務BPOの見積もり・料金・人員計画の中心になる指標です。
総務BPOの契約は、多くの場合「月額」で結ばれます。
- 毎月どれくらいの工数が発生するのか
- それを回すのに、フルタイム何人分(=何人月)必要なのか
- その人月数にどの単価を掛けるのか
といった判断を行うためには、
1か月の総務業務を人月として捉える視点が不可欠です。
一般的な前提は次のとおりです。
- 1か月の営業日数:20日(目安)
- 1日8時間とすると、
→ 1人月 = 20人日 = 160時間
月次総務業務を人月に変換する
ある企業の総務業務を総務BPOとして請け負うケースを考えます。
1か月の工数を人時で試算してみます(例):
- 郵便物の仕分け:1日0.5人時 × 20日 = 10人時
- 備品発注・管理:1日1人時 × 20日 = 20人時
- 社員からの問い合わせ対応:1日3人時 × 20日 = 60人時
- 入退社手続き:月合計 20人時
- 会議室・来客対応:月合計 10人時
合計:
10 + 20 + 60 + 20 + 10 = 120人時
これを人日に変換:
120人時 ÷ 8時間 = 15人日
さらに人月に変換:
15人日 ÷ 20人日/人月 = 0.75人月
つまり、
「この総務業務を1か月回すには、
フルタイム1人分の7〜8割程度の仕事量がある」
と言えます。
人月から現場の体制を逆算する
0.75人月の業務に対して、体制案はいくつも考えられます。
- フルタイム1人(1人月)をアサインし、空き0.25人月分は他案件を兼務
- 1日6時間勤務(0.75人月相当)のスタッフを1名配置
- 1日4時間+1日2時間のパートタイム2名で分担
人月という共通基準があるからこそ、
こうした組み合わせを冷静に検討できるようになります。
人月は、工数を経営・事業の言葉に変える単位です。
人時・人日の積み上げを人月にまとめることで、
「いくらで・どの体制で・どこまで対応するのか」を、
クライアントとも社内とも同じテーブルで話せるようになります。
